
消化管内科
概要・特色
消化管内科では、消化管疾患全般に対する診断と治療(薬物治療や内視鏡治療)を行っています。スタッフ数は現在6名です。絶食で受診された患者さんには、必要に応じてその日のうちに血液検査、超音波検査、内視鏡検査、CT検査などを行い、迅速な診断ができるよう心がけています。
消化管内視鏡は月曜から金曜まで毎日、午前中に上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を、午後から大腸内視鏡検査や各種内視鏡治療を行っています。
大腸ポリープや早期の消化管がん(食道がん、胃がん、大腸がん)に対しては内視鏡切除を積極的に実施しています。内視鏡切除が困難な場合は、外科、腫瘍内科、緩和内科とも連携し、最適な治療を提供できるよう努力しています。
国から難病に指定されている潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患についても専門的な診療を行っています。
原因不明の消化管出血や小腸疾患の精密検査にはカプセル小腸内視鏡を導入しています(火曜の専門外来で予約が必要)。
休日・夜間はオンコール制をとり、消化管出血などへの緊急処置に備えています。
入院患者さんの治療方針や内視鏡検査の結果などについて、それぞれ週2回開催するカンファレンスで検討し、診断や治療の質の向上と、情報共有化によるチーム医療の実践に取り組んでいます。
対象疾患
消化管の病気全般を対象とします。代表的な病気として、以下のようなものがあります。
消化管がん | 食道がん、胃がん、大腸がんなど |
---|---|
消化管ポリープ | 大腸ポリープ、胃ポリープなど |
炎症性腸疾患 | 潰瘍性大腸炎、クローン病など |
消化管出血(吐血、下血) | 胃潰瘍出血、十二指腸潰瘍出血、大腸憩室出血、虚血性腸炎など |
消化性潰瘍 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍など |
胃食道逆流症 | 逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症など |
感染性胃腸炎 | 細菌性胃腸炎、ウイルス性胃腸炎など |
機能性消化管疾患 | 機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など |
その他の消化管疾患 | ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、腸閉塞、大腸憩室炎、好酸球性食道炎/胃腸炎など |
診療実績
通常内視鏡、拡大内視鏡、超音波内視鏡、消化管X線などを用い、迅速で正確な診断をめざしています。大腸ポリープや早期消化管がん(胃がん、大腸がん、食道がん)の内視鏡切除では良好な成績を上げています。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の治療には生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬剤も積極的に使用しています。
入院患者数は年間500 名前後です。そのうち半数近くは大腸ポリープ切除の症例で、2023年は307例に対して実施しました。胃がん、食道がん、大腸がんの内視鏡的切除はあわせて年間約50例に行っています。
2023年の内視鏡件数は、上部消化管検査(胃カメラ)が3800件、下部消化管検査(大腸内視鏡検査)が1183件でした。ポリープや早期がん切除などの治療内視鏡は全部で616件でした。カプセル小腸内視鏡は13件でした。
消化管のがんは早期に発見できればほとんどの場合、完治します。最も早期の状態であれば、からだに負担が少ない内視鏡切除で完治が可能です。一方、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は近年、治療薬の進歩がめざましく、大部分は外来で症状のコントロールが可能となっています。
当科では消化管専門医がチームで診断や治療にあたり、質の高い医療を提供できるよう努めています。胃腸について気になることがありましたら、ぜひご相談ください。
消化管がんの内視鏡治療
がんの治療と聞くと、おなかを切る外科手術や抗がん剤による治療を思い浮かべる方が多いと思います。消化管(食道、胃、大腸など)に発生するがんの場合、粘膜内にとどまる初期の段階で発見されれば、転移している可能性がきわめて低いため、内視鏡治療により完治ができます。
内視鏡治療とは、口や肛門から内視鏡を入れ、内側から粘膜のみを切除する治療のことです。おなかを切ることなく、切除した粘膜は自然に修復されますので、大部分の方は後遺症を残さず元通りの生活に戻ることができます。このようにからだへの負担が少ない内視鏡治療を行うには、がんを早期に発見する必要があります。消化管の早期がんでは症状が出ることはほとんどないため、症状がなくても定期的に胃腸の検査を受けることが重要です。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
ヒトには免疫という機能がそなわっています。免疫とは、細菌やウイルスなどといった病原体からからだを守る防御システムのことです。本来はからだを守るための免疫が、なんらかの原因によって働きに異常をおこし、自分のからだの成分そのものを攻撃して発症する病気があります。総称して自己免疫疾患といいます。代表的な病気に、免疫が関節を攻撃する関節リウマチなどがあります。
炎症性腸疾患は、この自己免疫疾患のひとつと考えられており、免疫が自分の腸を攻撃することでひきおこされます。炎症性腸疾患の代表は潰瘍性大腸炎とクローン病です。おもな症状は下痢、腹痛、発熱、下血で、とくに潰瘍性大腸炎では大部分の人に下血がみられます(クローン病では少ない)。どちらの病気も、免疫に異常をきたす根本的な原因はわかっていません。
このため完治の方法はみつかっておらず、お薬によって症状や大腸粘膜の状態をコントロールすることが治療の基本となります。これまでに多くの治療薬が開発されており、健康な人とほとんど変わらない生活を送れる患者さんも少なくありません。
当科では炎症性腸疾患に対して専門的な治療を行っており、生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬剤も積極的に使用しています。
大腸憩室症(大腸憩室炎・大腸憩室出血)
大腸憩室とは腸の壁の一部が膨らみ、腸の外側へ袋状に飛び出した状態のことを指します。従来は欧米人に多い疾患と考えられていましたが、近年わが国でも増加傾向にあり、その頻度は年齢とともに高くなるとされています。憩室ができるしくみは明らかでありませんが、腸管内の圧力が高まることで、大腸壁の弱い部分が腸の外側へ押し出されて形成されると考えられています。原因として食物繊維の摂取不足や便秘、加齢などが推定されています。
大腸憩室があってもふつうは無症状で、炎症を起こしたり(憩室炎)、出血したりすると(憩室出血)、症状が出現します。憩室炎は腹痛や発熱、憩室出血は下血がおもな症状です。これらは大腸憩室を持つ方の10〜25%に発症するといわれています。発症した場合はどちらもすぐに病院で治療を受ける必要があります。