
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
概要・特色
5名の常勤医で診療に当たっており近隣の医療機関より多くの紹介患者さんを受け入れています。当科は伝統的に耳科疾患の紹介が多く、耳科手術は県内でもトップレベルの診療実績があります。鼻科疾患ではナビゲーションシステムを用いた安全性の高い内視鏡手術を行っています。各科と連携して、悪性を含む頭頸部腫瘍の治療を行っており、腫瘍を切除する手術に加え、拡大手術に伴う再建術、IMRT(強度変調放射線治療)、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による化学療法なども可能で、近年では低侵襲で術後の機能障害も少ない経口的手術も積極的に取り入れています。嚥下障害に対する嚥下訓練や誤嚥防止術、音声障害の治療も行っています。


対象疾患
耳鼻咽喉科・頭頸部外科のほぼすべての領域において高い専門性で診療可能です。代表的な病気として以下のようなものがあります。
耳の病気
急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、耳硬化症、顔面神経麻痺(顔面神経減荷術含む)、難聴(遺伝性難聴含む)、めまいなど
鼻の病気
副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎、鼻副鼻腔腫瘍など
咽喉頭の病気
扁桃炎、アデノイド、いびき、睡眠時無呼吸症候群、嚥下障害、音声障害、声帯結節、声帯ポリープなど
頭頸部腫瘍(がんを含む)
口腔(舌)腫瘍、咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、鼻・副鼻腔腫瘍、唾液腺腫瘍、甲状腺腫瘍、頸部リンパ節腫脹など
経外耳道的内視鏡下鼓室形成術(TEES)
経外耳道的内視鏡下鼓室形成術とは、内視鏡を用いて外耳道(耳の穴)から手術をおこなう術式です。外耳道から手術を行うことで小さな傷で手術ができるようになっています。当科では2011年より可能な場合は低侵襲な外耳道からの手術を行ってきましたが、内視鏡を導入することでさらに多くの患者さんに対して外耳道からの手術が可能になっています。患者さんによっては従来のように耳の後ろを切開したほうがよい場合もあり、当院ではそれぞれの患者さんに対して最も良い方法で手術を行うようにしています。
真珠腫性中耳炎の治療
真珠腫性中耳炎は鼓膜が中耳に引き込まれて耳垢がたまることで骨を壊していく病気です。根本的な治療は手術ですが、ドリルで骨を削る操作が必要な場合が多く、慢性中耳炎の手術と比べより高い技術力と経験が必要です。当院は以前より多数の耳科手術の診療実績があり、真珠腫性中耳炎の手術も日常的に行っています。真珠腫性中耳炎は再発が多い病気ですが、耳の軟骨を用いて外耳道を再建することで、再び鼓膜が中耳に引き込まれて再発する患者さんを大幅に減らすことができています。
ナビゲーションシステムを用いた鼻副鼻腔内視鏡手術(ESS)
ナビゲーションシステムシステムとは、どの位置を手術で操作しているのかを指し示すことができる安全装置です。近年では鼻の穴から内視鏡を入れて手術をするのが一般的になり、より低侵襲な治療が可能になりました。鼻副鼻腔の周辺には目や脳といった重要な臓器が存在しますが、ナビゲーションシステムを導入することで、より安全に鼻の手術をすることができるようになっています。また、当院では内視鏡下に鼻内でドリルを使用するような先進的な鼻副鼻腔内視鏡手術も可能です。
頭頸部癌の治療
頭頸部癌とは、首から上の目と脳を除く領域の癌です。頭頸部には感覚器に加え、嚥下や発声といった機能にかかわる器官があることが特徴で、機能を重視した治療が必要です。さらに見える部分でもあるため整容面にも配慮が必要です。当院では形成外科、放射線治療科、腫瘍内科、歯科、緩和ケア科などの院内各科と連携して治療を行っています。腫瘍を切除する手術に加え、拡大手術に伴う再建術、IMRT(強度変調放射線治療)、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による化学療法なども可能で、近年では低侵襲で術後の機能障害も少ない経口的手術も積極的に取り入れています。
経口的咽喉頭部分切除術(TOVS、ELPS)
経口的咽喉頭部分切除術とは、経口的に咽喉頭の表在癌を切除する手術で早期の癌が対象となります。従来であれば放射線治療が必要であった癌を、低侵襲かつ短期間に治療することが可能です。当院ではビデオカメラを用いたTransoral videolaryngoscopic surgery(TOVS)や消化器内科医と連携したEndoscopic laryngo-pharyngeal surgery(ELPS)といった手術を取り入れて、可能な患者さんにはより低侵襲かつ短期間の治療を行っています。
診療実績
2020年および2021年は新型コロナ感染症の影響で手術症例が減少しましたが2023年度は、1143例と大いに数を伸ばしています。2023年度の代表的な手術の診療実績は耳科手術120症例(うち鼓室形成術86症例、乳突削開術42例、顔面神経減荷11例など)、内視鏡下鼻副鼻腔手術146例、アレルギー性鼻炎の手術51例、口蓋扁桃摘出術105症例、頭頸部腫瘍の手術135症例(うち耳下腺20例、甲状腺19例、口腔腫瘍13例、頸部郭清7例など)などとなっています。