
妊孕性温存治療
当院では抗がん剤、放射線による治療前の女性に対し、妊孕性温存治療を行なっております。
妊孕性温存とは
抗がん剤や放射線による治療を受けることで、女性では卵巣内の卵子が減少し、また男性でも精巣で精子を作る機能が低下し、妊娠が難しくなる可能性があります。乳がんに対するホルモン療法でも、妊娠時期が遅れて年齢が高くなると妊娠しにくくなります。このような患者さんで将来的な妊娠の可能性を残す、もしくは高めるために行う治療を妊孕性温存治療といいます。具体的には抗がん剤や放射線の治療前に、女性であれば卵子や受精卵(配偶者がいる場合)、もしくは卵巣組織を凍結しておき、男性であれば精子を凍結しておきます。
方法:当院で行なっている妊孕性温存治療は、女性の卵子凍結と受精卵凍結(配偶者がいる場合)になります。 1回で複数の卵子を採取する目的で、排卵誘発剤を10日から2週間ほど連日注射し、複数の卵胞(卵子の入った袋)を育てて採卵を行います。2週間ほどの期間が必要です。採卵して得られた卵子を凍結保存、もしくは配偶者の方の精子と授精させて胚(受精卵)となったものを凍結保存します。 将来的にがん治療が終了して妊娠可能な状態となった時に、凍結した卵子を融解して配偶者の方の精子と顕微授精を行い、得られた胚(受精卵)を子宮内に移植します。胚(受精卵)凍結の場合は融解してそのまま移植を行います。
当院の妊孕性温存治療の対象
- 当院では原則として16歳以上40歳未満の方を対象としています。 排卵誘発剤による卵巣刺激や腟からの採卵などの操作が必要であり、月経が未発来のお子さんでは行うことができません。卵子、胚(受精卵)凍結は将来の妊娠を保証するものではありません。女性の卵子は年齢に伴い数、質ともに低下するため、卵子や胚(受精卵)を凍結した場合の妊娠率は年齢に大きな影響を受けます。年齢が高くなると最終的に出産に至る可能性は極めて低くなりますので、妊孕性温存治療は推奨しません。
- 現在の病気を診てもらっている担当医から情報提供が必須です。 妊孕性温存は、がんなどの治療を受ける方が、治療を終了された後の将来の妊娠のために行われます。病気の治療が優先であり、がん治療に悪影響がある場合は妊孕性温存治療を行うことができません。
※男性の妊孕性温存治療は行なっておりません。治療をおこなっている病院などについての情報提供が必要な方は、がん相談支援センターにお問合せください。
受付時間:月~金曜日(祝日除く) 8:30~16:00 連絡先:092-721-9991(直通):がん相談支援センター
費用や予約について
費用:卵子、胚の凍結保存には健康保険が適応されず、全額自費負担となります。 受精卵凍結 約35-40万円(1年分の保管料含む) 、卵子凍結 約30-35万円 (1年分の保管料含む) 、凍結1年後から、1年分の保管料 2万円
受診可能な日程について、婦人科外来にお問い合わせください。状況に応じてできるだけ早い受診日を決めます。
予約受付時間:月~金曜日(祝日除く) 14:00~16:00 連絡先:092-721-0831(代表):婦人科外来
小児・AYA世代がん患者等妊孕性温存治療助成制度
福岡県ではがん治療に際して行う妊孕性温存治療に要する費用を一部助成する制度があります。
詳しくは、県のホームページをご覧ください。
※当院は福岡県小児・AYA世代がん患者等妊孕性温存治療費助成事業に関する指定医療機関です。
外来用チェックリスト
当院で妊孕性温存治療(卵子および受精卵凍結)を行うには以下の条件を満たしている必要があります。
□ がん治療医からの紹介状がある
□ 女性である
□ 16歳以上40歳未満である
□ 抗がん剤、放射線治療までに2週間以上の猶予がある
□ 自費診療であることを理解している