
前立腺がん
前立腺がんについて
前立腺は男性にのみにある臓器で、膀胱の下・尿道を取り囲むようにある、栗の実のような形をしています。
前立腺の細胞が何らかの原因により異常に増殖することにより起こる病気です。
60歳ころから高齢になるにつれて、前立腺がんと診断される人が顕著に増えています。
進行は基本的にゆっくりではありますが、進行すると前立腺周囲の精のうや膀胱、直腸など周囲の組織に浸潤することがあります。
また、リンパ節や骨に転移することがあり、肺、肝臓、脳などに遠隔転移することもあります。
前立腺がんのリスクを高める要因として、家族歴が明らかにされており、家族歴がある人は早めの泌尿器科受診が必要です。
国立がんセンターのがん統計予測では、前立腺がんは、本邦における2020年の男性の罹患率第1位、2022年の男性の死亡率第7位とされています。
当科ではロボット支援手術を行っており、術後失禁の早期回復に対して寄与されている神経温存手術も希望がある際は行っております。
主治医にご相談ください。
症状
早期の前立腺がんは多くは無症状ですが、進行すると排尿困難(尿が出にくい)や頻尿(尿の回数が多い)、血尿や骨への転移に伴う痛みなどがみられることがあります。
検査
PSA検査
PSA(前立腺特異抗原)はある種のタンパクで、ほとんどは前立腺液に分泌されます。
がんや炎症で前立腺組織が壊れると、PSAが血液中に漏れ出し増加します。
PSAの基準値は一般には0~4ng/mlです。PSA値4~10ng/mlをいわゆるグレーゾーンといい、3割前後でがんが発見されています。
また、4ng/ml以下でもがんが発見されることもあります。
直腸診・経直腸エコー
医師の指やプローブ(超音波を発する道具)を、肛門から挿入し、前立腺の性状を確認する検査です。
前立腺の表面が硬かったり、凹凸があったり、左右非対称だったりするとがんを疑います。
前立腺針生検
前立腺がんが疑われた場合に、最終的な診断のために前立腺針生検を行います。
エコーで前立腺を確認しながら、細い針を刺して組織を採取します。
初回の生検では、12~14か所の組織採取を行います。
画像検査
必要に応じて、MRI検査・CT検査・骨シンチ検査を行います。
MRI検査では、がんの存在の有無、前立腺内外でのがんの位置をみます。
CT検査では全身の転移の有無をみます。骨シンチでは、特に骨転移の有無をみます。
治療法
治療法には転移の有無によってできる治療は違いますが、主にPSA監視療法、手術療法、放射線療法、薬物療法などがあります。
診断された前立腺がんのステージやリスク分類、年齢や患者さんの身体的状態や社会的状況を考慮して最も適した治療方法を選択します。
PSA監視療法
特に低リスク(PSA<10、グリソンスコア6以下、臨床病期T1cまたはT2a)で生検陽性本数が少ない場合は、直ちに治療を行わず、定期的にPSAを測定し、基本的には1年に1回程度前立腺針生検を行い経過をみていきます。
PSAの上昇速度が速い場合や希望があれば治療を受けることができます。がんの進行がなく経過をみれる場合があります。
手術療法
前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道をつなぎ合わせます。
リスク分類によって前立腺周囲のリンパ節を取り除きます。
以前は開腹術・腹腔鏡下手術を行ってきましたが、現在はロボット支援腹腔鏡下手術が主流です。
ロボット支援手術は傷が小さく出血が少なく、繊細な動きができます。
手術のデメリットとして失禁がありますが、半年ほどで生活に支障ない程度に回復する方がほとんどです。
ただし、完全に直すことが難しい場合もあります。
ロボット支援手術は従来の方法よりも格段に失禁改善率があがっている報告があります。
当科では男性機能の可能な限りの温存や早期失禁の改善を目的に神経温存を行っています。主治医にご相談ください。

放射線治療
高エネルギーのX線や電子線を照射してがん細胞を壊し、癌を小さくする治療です。
外照射療法と組織内照射療法があります。
いろいろな方法がありますが、当院では外照射療法であるIMRTを行っています。
IMRT(強度変調放射線療法)
周囲の臓器への放射線照射量を軽減しつつ、前立腺への照射量を上げるために、さまざまな方向から、方向により放射線の量を細かく変えつつ照射する方法です。
74Gy程度を前立腺に照射できるので、従来の方法に比べて有害事象も少なく治療成績は向上しています。
小線源治療
密封小線源(以下小線源)は、ヨウ素125という放射線を出す物質を径0.8mm、長さ4.5mmのチタン製カプセルに密封したもので、ヨウ素125から出る放射線はエネルギーが弱く飛程が短いのが特徴で、放射線は徐々に減衰し約2カ月で半分になり1年でほとんどなくなります。
多数の小線源を前立腺に埋め込むことにより、通常の外照射では不可能な高い放射線を前立腺に照射できる一方、周囲臓器への影響は少なく、手術に匹敵する効果が得られ、体への負担は少ない治療です。
病状により外照射やホルモン療法を併用して行います。当院では行っておりません。
重粒子線治療
重粒子線と呼ぶ特殊な放射線を照射する方法です。原理としては従来の外照射に比べて前立腺に高い放射線量を照射できます。
当院からは鳥栖市の九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)へご紹介いたします。
薬物治療
内分泌療法(ホルモン療法)
前立腺は精巣や副腎から分泌される男性ホルモンの影響下にあります。
内分泌療法は男性ホルモンの作用が前立腺がん細胞に及びにくくすることで、がんの勢いを抑える治療です。
また、放射線治療と併用することがあります。
実際の治療方法としては、睾丸からの男性ホルモンの分泌を止めるホルモますン剤の注射と加えて、男性ホルモンの作用をブロックする内服薬も使用します。
近年は、従来の抗アンドロゲン薬よりもアンドロゲン受容体の働きをより強く抑制する新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)が複数登場し、治療の選択肢が広がるとともに早い段階での使用が注目されています
。
化学療法
化学療法は抗がん剤の投与により、がん細胞を消滅させたり小さくしたりすることを目的として行います。
ドセタキセルやカバジタキセルがあります。内分泌療法が効きにくい場合や転移があるがんで使用されます。
その他
骨転移
骨転移を伴う場合はデノスマブなどの破骨細胞(骨を破壊・吸収する働きを持つ細胞)を抑制することにより、骨転移の進行を抑制する働きのある薬を用いて治療する場合があります。
去勢抵抗性前立腺がんで、病巣が骨転移のみであれば塩化ラジウム223(ゾーフィゴ)を用いた治療を行う場合があります。
これは注射で投与されたラジウムが骨転移部位に集積し、そこでアルファ線を放出してがんに効果をもたらします。
転移性去勢抵抗性前立腺がん
内分泌療法が効きにくい「転移性去勢抵抗性前立腺がん」では、ゲノム診断(前立腺がんへの関与が指摘されているBRCA1、BRCA2などの遺伝子の変異)に基づき、治療を行うこともあります。
遺伝子の検査
遺伝子の検査には、特定の遺伝子の変異や特徴だけを調べる検査(がん遺伝子検査)と、複数の遺伝子の変異や特徴を一度に調べる検査(がん遺伝子パネル検査)の2種類があります。