
膵・胆道がん
膵臓がんについて
膵臓は、胃の背側にある細長い臓器で、十二指腸、胃、脾臓、主要血管(門脈、上腸間膜動脈、大動脈、下大静脈など)に囲まれています。
膵臓の主な働きは、消化液である膵液を膵管から十二指腸へ分泌する機能(外分泌)と、インスリンなどの血糖調節ホルモンを分泌する機能(内分泌)とがあります。
膵臓がんの死亡数(2022厚生労働省人口動態統計) は、男性19,608人(第4位)、女性19,860人(第3位)で年々増加傾向にあります。 膵臓がん死亡数の多さは、膵臓がんに対する有効なスクリーニング検査法がなく早期発見が難しいことが一因とされています。

膵臓がんの症状
膵臓がんは早期で症状を自覚することが少なく、進行することで腹痛、黄疸、背部痛、体重減少などがみられることがあります。
膵臓がんの検査
膵がんは検診やスクリーニング検査では診断困難なことが多く、 腫瘍マーカー、CT、MRI、超音波検査、超音波内視鏡(EUS)、内視鏡的胆管膵管造影法(ERCP)などから総合的に診断されます。
膵臓がんの治療
①手術治療、②化学療法(抗がん剤治療)、③放射線治療、④ステント治療があります。根治(完全に治ること)を期待できるのは手術のみですが、術後再発リスクが高く、近年では抗がん剤を術前後に使用することが推奨されています。膵癌取扱い規約第7版2016年 では、治療方針決定のために「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」の3つの分類が定められました。
「切除可能」膵がんは術前化学療法後の手術が推奨されています。
「切除可能境界」では化学療法後に画像評価等を行い手術適応を再評価します。
「切除不能」では化学療法や化学放射線療法、緩和ケアなどが適応となります。

膵癌治療アルゴリズム
膵癌診療ガイドライン2022年版より引用改変
膵臓がん手術の術式ついて
(1) 膵頭十二指腸切除術
膵頭部にがんがある場合に、膵頭部、十二指腸、胃・小腸の一部、胆のう・胆管・リンパ節を一括切除します。切除後、残った膵臓と小腸、胆管と小腸、胃と小腸をつなぎ、膵液・胆汁・食物の通る経路を再建します。
(2) 膵体尾部切除術
膵臓の体部・尾部に癌がある場合に膵臓の左側(体尾部と脾臓を摘出します。
(3) 膵全摘術
がんが膵臓全体に及ぶ場合は膵全摘術が行われます。術後は、血糖をコントロールするために生涯インスリン注射と消化酵素内服が必要となります。
(4) バイパス術
がんが進行して十二指腸が閉塞している場合には、癌の摘出ができなくても胃と小腸をつないで(バイパス手術)食事を摂れるようにすることができます。

当院の膵臓がん手術割合


胆道がん(胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部)について
胆道がんは、肝臓で合成された胆汁の通り道(胆道)にできるがんです。胆汁は、肝臓内の胆管から胆管(胆嚢)、乳頭部を経て十二指腸へ排出されます。発生部位によって胆管がん、胆嚢がん、乳頭部がんに分けられます。
本邦の胆道がんの年間死亡数は約22,000例、部位別がん死亡者数は6位です(国立がんセンター統計2019)。
膵胆管合流異常、原発性硬化性胆管炎、肝内結石、有機溶媒暴露などが胆道がんのリスクファクターといわれています。
胆道がんの症状
胆道がんでは、閉塞性黄疸、右上腹部痛、白色便などがみられることがあります。がんの進行によって全身倦怠感、食欲不振、体重減少などがみられることがあります。
胆道がんの治療
治療法は、癌の局在、進行度(ステージ) によって決定されます。ステージは、胆道壁深達度、周囲進展、肝動脈などの主要血管への浸潤、領域リンパ節転移、遠隔転移などの有無で規定されます。近年では術後の生存率向上に補助化学療法の有効性が報告されています。根治治療は手術ですが、手術でがんを取り除くことが難しい場合、化学療法(抗がん剤)が適応となります。
[手術術式]
(1) 胆嚢がんと上部胆管がんの手術
胆嚢と胆管、周囲のリンパ節と肝臓の一部を切除する手術が標準的です。肝臓の切除範囲は、胆道がんの局在、壁進展度により決定されます。胆嚢がんでは肝臓との付着部(肝床)切除を行う場合もあります。胆管切除を行なった場合には、残った胆管と小腸を吻合し胆汁の通る経路を再建します。
(2) 遠位胆管がんと乳頭部がんの手術
膵頭十二指腸切除術を行うのが標準的です(膵頭部癌の項を参照)。
当院の胆道がん手術割合


当院の閉塞性黄疸に対する治療
膵がん・胆道がんでは腫瘍で胆管が狭窄し、閉塞性黄疸や胆管炎をおこすことがあります。この場合、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)や内視鏡治療(ERCP)などを行います。近年ではQOL維持のためERCPによる胆管ステント留置を選択する施設が多く、当院でも積極的におこなっています。
