肝臓内科 部長
具嶋 敏文
Q.) 脂肪性肝疾患とはどのような病気でしょうか?
A.) 肥満やアルコールにより、肝細胞内に脂肪がたまった脂肪肝の状態になります。肥満人口の増加、生活習慣などの変化により、脂肪肝の方が増加しています。飲酒量の多くない方の脂肪肝のことを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。NAFLDの患者さんは日本には1,000万人以上いると推定されており、そのほとんどが予後良好な単純性脂肪肝ですが、10%程度は肝硬変、肝がんまで進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病態であり近年注目されています。NAFLDからの肝発がん率は一年間で1000人のうち0.43人程度と低率ですが、NASHになると5.29人、NASHから肝硬変になると報告によりばらつきはありますが0.45~22.6人と、病態が進むと発がん率が上がります。「脂肪肝だから」と放っておくと症状が出たときには肝硬変、肝がんになっている方もいます。また、NAFLDの患者さんはさまざまな合併症を持っている方も多く、心筋梗塞、脳卒中、他の臓器の癌のリスクが高くなることが知られています。
Q.) 脂肪性肝疾患の治療は?
A. ) 脂肪性肝疾患の治療としては、生活習慣を改善することが基本となります。肥満に対しては標準体重を目標として、食事・運動療法で減量するように努めましょう。肥満のある方は体重の7%減(例えば、体重 70kgの場合、マイナス5kg)を目標にゆっくりと減量しましょう。体内の脂肪を燃焼させるため、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週3~4回、30分以上することが望ましいと言われています。ただしそれぞれの体力に合わせて無理のない範囲で行いましょう。また関節に負担をかけない程度の筋肉トレーニングやヨガなどを加えると筋肉量が増加して基礎代謝が高まり効果的です。食事療法については当院では管理栄養士から栄養指導を受けることもできます。
飲酒は日本酒 1合、ビール 500ml、ウイスキーダブル1杯、ワイングラス2杯が純アルコール 20~30gであり、これ以下に抑えれば肝障害をきたしにくいと思われます。
体重コントロールや節酒・禁酒により脂肪性肝疾患は改善することが分かっています。ぜひご自分の生活を見直すことから始めてみてください。