肝臓内科 部長
具嶋 敏文
Q.) C型肝炎ウイルスはどのように感染するのでしょうか?
A.) C型肝炎ウイルス(HCV)は日本では約150~200万人が感染していると推定されています。1990年以前の輸血、血液製剤、注射針などの共用や不十分な消毒などの医療行為が感染の主な原因です。出産時の母子感染や性交渉による感染は比較的まれと考えられています。現在では輸血での感染はほとんどなく、医療機関では使い捨ての注射器などを使用しており、新たな感染はほとんどなくなっています。
Q.) C型肝炎になると病気はどのように進みますか?
A.) HCVに感染した方のうち30%は完全に排除されますが、70%では持続感染します。C型慢性肝炎が持続すると肝硬変、肝がんに進展します。慢性肝炎や初期の肝硬変・肝がんでは症状がないことも多いのですが、放っておくと知らないうちに肝臓病が進行している場合もありますので、検診などでHCV感染が分かった人は必ず医療機関を受診してください。飲酒、肥満、糖尿病などで肝臓に脂肪がたまった状態になると、C型肝炎の進行が速いことが知られています。
Q.) C型肝炎の治療は?
A.) HCVに感染しているかどうかは、まず採血でHCV抗体検査をおこない、陽性であればHCVの遺伝子であるHCV-RNAを測定します。 RNAが陽性であれば治療を行います。C型慢性肝炎の治療の目標は、肝炎が進んで肝硬変や肝がんにならないようにすることです。以前はインターフェロン製剤の注射で治療していましたが、有効性や副作用の面から最近では用いられなくなりました。2014年に飲み薬だけでの抗ウイルス療法が始まり、8~12週間程度の内服で95%以上の方でHCVの排除(治癒)が期待できるようになりました。また、インターフェロンは副作用が強かったのですが、飲み薬の治療は副作用が軽く、高齢の方でも治療ができるようになりました。現在では慢性肝炎だけではなく肝硬変の方にも治療対象が広がってきています。この新しい飲み薬は非常に高額ですが、国の助成制度があり治療が受けやすくなっています。以前、インターフェロンの副作用で治療を断念した方や肝硬変なので治療が受けられなかった方などは治療可能な場合がありますので肝臓専門医を受診してみてください。
Q.) 日常生活での注意は?
A.) HCVは血液を介して感染しますが、食事、入浴などの日常生活で感染することは通常ありません。ただし歯ブラシやかみそりなど血液に触れる可能性があるものは共用しないようにしてください。C型肝炎の方は飲酒や脂肪肝、糖尿病などで肝硬変や肝がんのリスクが高まりますので適度な運動や節酒、体重コントロールが重要です。抗ウイルス療法でHCVを排除すると、肝がんができる頻度は低下しますが、とくに高齢な方や肝硬変まで進行している方では、HCV排除後も肝がんができる可能性が低くないので、定期的な検査を受ける必要があります。