呼吸器内科 部長
前山 隆茂
患者さんに「浜の町病院に来てよかった」と言っていただけることを目標に、誠意を持って診療にあたっています。
概要・特色
当科は1987 年に設立されました。当時、呼吸器専門医が在籍する医療機関といえば大学病院、がんセンター、結核専門病院など高次専門施設に限られていましたが、今では市内の主な総合病院に呼吸器内科が常設されています。
浜の町病院呼吸器内科では設立当時からの "患者さんに寄り添う気持ち" を忘れずに、患者さんお一人お一人にとって真に必要な医療を提供するように心がけています。現在、日本呼吸器学会ならびに日本呼吸器内視鏡学会の施設認定を受けています。
対象疾患は、肺がん・肺炎・胸膜炎・COPD 増悪・気管支喘息発作・間質性肺疾患などです。特に肺がんついては院内の放射線科、病理診断科、呼吸器外科、緩和ケアチームと連携することで診断から治療まで一貫した医療体制を提供しています。
紹介患者さんを対象とした新患外来は毎日医師2 名体制で行っています。入院診療は主治医が中心となりますが検査・治療方針は症例検討会を通して呼吸器内科の総括として決めています。さらに患者さんに関わる複数の専門職によるカンファレンスを行うことでチーム医療を実践しています。
対象疾患
肺がん、呼吸器感染症(肺炎、胸膜炎、膿胸など)、間質性肺炎、気胸、COPD、気管支喘息などです。
肺がんとは
人の体は細胞から出来ています。細胞は規則正しく活動していますが、無秩序に異常な増殖をするようになったものが"がん細胞"です。肺がんとは、肺の正常細胞が異常増殖して発生したがんです。肺がん細胞にはいくつか種類があり、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌が代表的です。このうち小細胞癌以外は、まとめて非小細胞癌とも呼ばれます。
肺がんのステージ(臨床病期)
ステージ(臨床病期)は肺がんの拡がり具合を表すものです。肺がん本体(原発巣)の大きさ(T因子)、肺がん細胞が胸の中のリンパ節に及んでいるかどうか(N因子)、肺がん細胞が胸の外の臓器へ及んでいるかどうか(M因子)の組み合わせによってステージが決まります。TNM各因子の分類と組み合わせは複雑ですが、ステージはⅠ(いち)期、Ⅱ(に)期、Ⅲ(さん)期、Ⅳ(よん)期に大きく分類されます。
肺がんの治療
肺がんを抑える治療には外科治療、放射線治療、がん薬物治療があります。肺がんに伴って生じる諸症状には緩和医療が行われます。肺がんの治療方針を決めるためには、肺がん細胞の種類(組織型)、ステージ(臨床病期)、さらに全身状態が重要です。特に外科治療、放射線治療、がん薬物治療には副作用リスクが伴うため、治療法選択に際しては患者さんの併存疾患(がん以外の持病)や身体活動度を慎重に評価する必要があります。
気管支内視鏡検査とは
気管支鏡とは直径0.5 cm程度、長さ60cm程度の管状カメラ(内視鏡)です。画像検査で肺や縦隔リンパ節に病変を認めた場合、組織診断や細胞診断を目的に気管支鏡検査を行うことになります。その名の通り気管支内腔は観察できますが、肺やリンパ節そのものが直接見えるわけではありません。 次に具体的な検査手順を述べます。
- 検査前の一食は絶食です。
- 内視鏡検査室へ案内されます。
- 霧吹きのような器具で喉に局所麻酔を受けます。喉がつまった感じがしますが、 麻酔作用のためで呼吸に影響はありません。
- 検査ベッドに仰向けに横たわります。血圧計や酸素濃度測定器が装着されます。麻酔薬などが眼に入らないよう眼は布で覆われます。歯茎を守るためにマウスピースをくわえます。負担を和らげるために適宜、鎮静薬の静脈注射を受けます。
- 検査担当医によって気管支鏡が口から喉を通して気管支内へと挿入されます。
- 検査担当医は気管支鏡先端から病変へと検査用器具を進めていきます。病変と検査用器具の位置X線透視画像で確認します。さらに気管支鏡専用の超音波装置で位置を確認する場合もあります。
- 大量出血などの合併症が起きていないことを確認して気管支鏡検査は終了になります。麻酔と鎮静薬の影響でふらつくことがあるので、検査直後は車いすあるいはストレッチャーで病室へ移動します。麻酔や鎮静の影響が無くなるまでは安静で絶飲食になります。
肺炎とは
肺炎とはなんらかの原因によって肺に炎症が生じた状態です。通常はウイルスや細菌による感染性肺炎を意味します。菌がついた手で口や鼻を触ることで、あるいは他者の咳やくしゃみによる(菌を含んだ)飛沫を吸い込むことで感染します。肺炎はだれにでも起こりえますが、肺炎を起こしやすい要素としては、肺や心臓の持病、栄養状態不良、嚥下機能低下(飲み込む力が弱っている)、身体活動力低下(歩く能力が弱っている)などがあげられます。こうしたリスクが増えてくる高齢者では、口腔内常在菌(もともといる口の中に存在している菌)を唾液や食べ物とともに誤嚥して発症する誤嚥性肺炎に注意が必要です。誤嚥性肺炎は適切な治療を行なっても回復しない恐れが高くなります。予防策として、バランスのよい食事を摂取する、口腔ケアや嚥下体操を行う、散歩や体操などの運動を日常的に行うことが大切です。
間質性肺炎とは
肺は空気をとりこむために風船状構造をしていますが、その内部は間質という壁によってさらに小いさい風船構造に分かれています。この間質に炎症が生じた状態が間質性肺炎です。炎症が生じる原因は様々で、間質性肺炎は複数の病態と疾患を含む総称です。原因が不明な特発性間質性肺炎、リウマチや膠原病など自己免疫疾患と関連した間質性肺炎、生活環境中からの刺激粒子を吸い込むことでおこる過敏性肺炎などが代表的です。短期間で急性に進行してしまうものもあれば、ゆっくりと進行するものや、長期間ほぼ変化しないものもあります。また間質が厚くなって肺構造が硬くなる線維化と呼ばれる変化を起こすものもあります。決定的な治療法はありませんが、炎症を鎮める目的ではステロイドや免疫抑制剤を使うことがあります。線維化の悪化を抑制する目的では抗線維化薬が選択肢となります。
気胸とその治療
気胸とは、肺がしぼんでしまった状態です。肺は例えると、胸郭という箱の中に風船(肺)が膨らんだ構造をしていますが、なにかの拍子に肺の表面から空気が漏れて胸郭と肺の隙間に溜まってしまうと、肺が十分に膨らむことができなくなります。気胸になると急に胸の痛みや息切れが起きます。肺のしぼみが軽い場合は症状も軽度で、安静のみで自然に治ることがありますが、程度が強い気胸では生命に危険がおよぶ恐れもあります。治療は肋骨の間から胸の中へチューブを挿入して、胸郭内に溜まった空気を外部へ吸い出す方法(胸腔ドレナージ)を行います。胸腔ドレナージで治癒しない場合や、再発するリスクがある場合は、空気が漏れている肺の部分を外科手術で切除する方法をおこなうことがあります。
診療実績
2020年の入院患者数は659件でした。肺がんが325件で半数近くを占めています。肺がん以外では、いわゆる呼吸器感染症が計122件(肺炎等79件、その他の感染症22件、誤嚥性肺炎21件)でした。その他の代表疾患のうちわけは間質性肺疾患が計66件(間質性肺炎50件、自己免疫性疾患に伴う肺疾患16件)、気胸16件、慢性閉塞性肺疾患増悪14件、気管支喘息発作13件でした。
気管支内視鏡検査数は年間200件程度ですが、2020年はコロナ禍の影響もあり125件と減少しています。このうち超音波気管支鏡検査の割合は67.2%です。診断確定した肺がんの織型の内訳は肺腺癌 51.2%、肺扁平上皮癌 18.6%、小細胞肺癌 11.6%、亜型不明非小細胞肺癌 11.6%, その他(転移性腫瘍など)6.9%でした。入院と外来を合わせた肺がん化学療法(内服治療を除く)の2020年実施数は885回でした。治療内容の割合は細胞障害性抗がん薬のみによる治療 45.4%、免疫チェックポイント阻害薬のみでの治療 44.1%、細胞障害性抗がん薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用治療 10.5%でした。
外来担当医師
午前
月 | 前山 隆茂 池松 祐樹 |
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火 | 前山 隆茂 小川 知洋 |
水 | 前山 隆茂 中島 真亜子 |
木 | 中島 真亜子 池松 祐樹 |
金 | 前山 隆茂 小川 知洋 |