頭頸部がんについて
頭頸部がんとは、頭頸部領域(鼻腔及び副鼻腔、口唇及び口腔、咽頭、喉頭、耳下腺や顎下腺などの大唾液腺、甲状腺など)に発生する悪性腫瘍の総称で、全がんの約5%程度と言われています。
頭頸部がんの症状
痛みや違和感で気づく場合や、舌や唾液腺、甲状腺にしこりができて気づかれたり、首のリンパ節にがんが転移して気づかれることもあります。頭頸部領域には咀嚼、嚥下、発声、構音、嗅覚および味覚、など様々な機能を有した臓器が存在しています。がんが大きくなるとそれらの機能に障害がでることがあります。
頭頸部がんになったらどこを受診すればいい?
耳鼻咽喉科は脳と眼球を除いた頭頸部のがんに対応しており、頭頸部の手術を多く行う施設の中には「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」と標榜している施設も多くなっています。甲状腺がんは耳鼻咽喉科でも治療をしていますが、外科でも治療をしておりどちらかを受診されればよいでしょう。舌がんを含む口腔がんの専門は耳鼻咽喉科もしくは歯科口腔外科とされていますが、耳鼻咽喉科と歯科口腔外科の関係について興味があるかたは日本耳鼻咽喉科学会ホームページの「口のなかのがん(癌)は誰が診るの?」(http://www.jibika.or.jp/citizens/topics/0609_area.html)をご覧ください。
頭頸部がんの検査
視診や触診に加え、内視鏡で観察したり、エコー、CT、MRIなどの画像検査を行いて腫瘍の有無や広がりを調べます。腫瘍が確認されれば組織を採取して病理検査を行い、がんかどうか、どのような組織型のがんなのかを検査します。口腔および咽喉頭がんは重複がん(胃、食道、肺などの多臓器に発生するがん)の発生が多いとされており、上部消化管内視鏡検査やPET検査も必要になります。病期(ステージ)や重複がんを詳細に検査して最適な治療を行います。
頭頸部がんの治療
頭頸部の固形がんの治療は、手術、放射線治療、薬物治療のいずれか、もしくはそれらを組み合わせて行われます。治療方針は、がんの位置や病期、既往歴、年齢、全身状態などから総合的に検討されます。
手術
皮膚に切開を加えて切除する手術が基本となりますが、腫瘍の位置や広がりによってはより負担の少ない経口的手術で治療することができる場合があります。また、切除範囲が大きくなる場合は、形成外科医や外科医と協力して再建手術(胸部、腹部、大腿、腸管などを移植して欠損部を再建する手術)を同時に行います。
放射線治療
放射線治療の効果は薬物治療を同時に行うことで増強されるため、薬物治療と放射線治療を同時に行う化学放射線治療が広く行われています。放射線照射の技術も従来より向上しており、IMRT(強度変調放射線治療)により放射線をがんに集中させて正常組織への副作用を軽減させることが可能になりました。また、がんの位置や組織型によっては重粒子線治療の適応になることがあります。
薬物治療
前述の放射線治療に組み合わせて使用される場合に加え、化学放射線治療や手術の前に行われる導入化学療法として行われたり、再発や転移の場合に行われる場合があります。旧来の抗がん剤に加え、最近では分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬も場合によっては健康保険の範囲内で使用されることが可能になっています。
当院の頭頸部がん治療
頭頸部にはは咀嚼、嚥下、発声、構音、嗅覚および味覚、など様々な機能を有した臓器が存在しています。生命予後が最も重要なのは言うまでもありませんが、当院では頭頸部がんの治療においては治療後の生活の質を保つために可能な限りの機能温存に努めています。
頭頸部の固形がんの治療に当たっては、耳鼻咽喉科医、外科医、形成外科医、腫瘍内科医、放射線治療医、緩和治療医、病理医などの専門各科の医師に加え、様々なコメディカルスタッフが連携して最適な医療を行えるよう体制を整えています。悪性リンパ腫などの血液のがんについて、頭頸部に発生しても血液内科で治療を行っています。
手術については従来の手術に加えて経口的手術にも積極的に取り組んでおり、常勤の形成外科医と連携することで再建手術を含めた頭頸部がん手術にも対応しています。放射線治療はIMRT(強度変調放射線治療)による副作用を軽減した治療も積極的に行っています。重粒子線治療の適応がある場合は重粒子センターへ紹介しています。薬物療法は常勤の腫瘍内科医がいることで、一般的な抗がん剤治療のみならず分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療も行えます。また、緩和治療というと末期がんのイメージを持たれる方も多いと思いますが、最近ではがん治療の初期から緩和治療を行う時代になっています。少しでも苦痛の少ない治療が行えるよう主治医と常勤の緩和治療医が連携して治療を行っています。