甲状腺腫瘍について
甲状腺は前頚部にある蝶のような形をした15~20g程度の小さな器官で、新陳代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺の病気にはバセドウ病や慢性甲状腺炎などの主に内科的治療を行う病気と、外科的手術の対象となる甲状腺腫瘍があります。良性腫瘍は有病率が100人に1人、悪性腫瘍は1000人に1人程度で、好発年齢は40~50歳代をピークに幅広い年齢層に分布し、男女比は1:5~8で女性に多いのが特徴です。症状としては首のしこりを自覚されることが多く、また頸部エコーなどの検診で見つかることもあります。
甲状腺の検査について
甲状腺腫瘍が疑われた場合良性と悪性(乳頭癌)の鑑別が重要ですが、や超音波検査や注射針で腫瘍細胞を吸引する細胞診をおこないます。
甲状腺癌の治療について
癌のうち90%を占める甲状腺乳頭癌は生命に関わる可能性のほとんどない低危険度群(80~90%)とその可能性が高い高危険度群に区別されます。前者の10年生存率は99%以上ですが、後者は50%~70%程度です。高齢、大きな腫瘍径、甲状腺外浸潤、遠隔転移、巨大なリンパ節転移などが重要な予後不良因子とされます。他に有効な治療法がないため手術が第一選択です。癌の場合は前頚部を横に切開して甲状腺の一部あるいは全部を摘出し、同時にリンパ節を郭清する手術を行います。 しかし1cm以下の乳頭癌で甲状腺外浸潤やリンパ節転移、遠隔転移がなく予後良好と考えられる場合は手術をせずに経過観察(Active surveillance)をすることがあります。