急性虫垂炎とは
- いわゆる「盲腸(もうちょう)」と呼ばれることが多いですが、正式な病名は「急性虫垂炎」です。
- 虫垂が糞石などの原因で閉塞すると、腸内細菌が増殖し感染・炎症を起こして虫垂炎を発症します。
- 炎症がすすみ血流も悪くなると、虫垂は壊死してやがて破れてしまい、汎発性腹膜炎や膿瘍形成に発展することもあります。
虫垂はどこにあるのか?
虫垂は大腸の一部で、通常は右の下腹部にあり、盲腸(大腸)の端から細長く飛び出している突起のような臓器です。
典型的な症状は?
- 腹痛(典型的にはみぞおちの痛み→右下腹部の痛み)
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢 などです。
診断の方法
- 問診・身体所見(診察)
- 血液検査
- 尿検査
- レントゲン検査
- 腹部超音波検査
- CT検査
虫垂炎の3つの病型
① カタル性虫垂炎
初期の虫垂炎で、虫垂がわずかに腫大する程度です。
抗生物質での治療も可能です。
② 蜂窩織炎性虫垂炎
虫垂は腫大し強い充血を認め内腔には膿がたまります。
手術を行うことが多いです。
③ 壊疽性虫垂炎
虫垂は著明に腫大して褐色~黒色に変化します。
壁が破れていることも少なくありません。
治療方法
保存的治療
発症初期で炎症が軽い場合には(カタル性や一部の蜂窩織炎性)、抗生物質による治療が可能です。
内服薬か点滴薬の治療となります。
外来通院で治療できる場合もあります。
約20-30%の確率で再発するといわれています。
手術治療
炎症が強い場合や抗生物質で治らない場合には手術が必要となります。
手術について
- 炎症のある虫垂を切除します(1~1.5時間程度)。
- 虫垂の根元で破れていた場合などは、腸切除(回盲部切除術)が必要となることもあります。
- 以前は開腹による虫垂切除術が行われていましたが、現在当院では腹腔鏡下の虫垂切除術を積極的に行っています。
腹腔鏡手術
(手術中のモニター写真)
腹腔鏡手術の利点
- 傷が小さく、痛みが少ない。
- 入院期間が短くなる。
- 腹腔内全体を観察でき正確な診断が可能。
- 創感染が少ない傾向にある。
腹腔鏡手術の欠点
- 従来の開腹手術に比べ、手術室の環境準備(カメラ・モニターなど)含めて手術時間が長くなることがある(むしろ短時間で終わることもあります)。
- 全身麻酔が必須となる。
待機的虫垂切除術(Interval appendectomy)
- 通常、虫垂切除術は緊急(準緊急)手術を行います。
- しかし、診断時から膿瘍(膿のたまり)を形成しているような場合には、抗生物質でいったん炎症を落ち着かせてから、数か月後に待機的(計画的)手術を行うこともあります。
- 「Interval appendectomy」と呼ばれ、出血量や手術時間、術後の合併症を減らすことが出来ると報告されており、当院でも積極的に取り入れています。
手術後の経過・合併症
術後経過
- 通常は手術翌日より食事を開始でき、術後2-3日で退院可能です。
- 虫垂が破れて腹膜炎を併発していた場合などは、合併症の危険性も高くなるため入院期間が長くなることもあります。
起こり得る合併症
- 創感染
- 腸閉塞
- 遺残膿瘍
- 糞瘻 など
- その他、感染症や全身麻酔に伴う一般的な合併症
おわりに
- 急性虫垂炎は早期に治療を行えば、大きな合併症なく完治させることができる病気です。
- 放っておくと腸が破れて腹膜炎を発症し、ときには命にかかわることもあります。
- 発症初期の場合は症状が軽く、診断が難しいことも少なくありません。
- 病院を受診して確定診断がつかなかった場合でも、腹痛や発熱、吐き気などの症状が治まらない場合には夜間・休日に関わらずもう一度病院を受診されてください。