近年新たな治療方法、治療薬の有効性を評価するために多くの多施設臨床試験が行われるようになってまいりました。当院循環器内科におきましても、多くのそれらの臨床試験に協力しております。その際に患者様のデータを使用させていただく場合がございます。データを使用する場合には、患者様のプライバシーには十分配慮し匿名化をいたしますので、個人が特定されることはございません。しかし、データの使用を希望されない場合にはお申し出いただければ使用いたしません。また、その際に患者様にその事で不利益が生じる事も一切ございません。
浜の町病院循環器内科が参加している臨床試験のご紹介
1.本邦における心血管インターベンションの実態調査(J-PCIJ-EVT)
冠動脈インターベンション(Percutaneous Coronary Intervention;以下PCIとする)は、虚血性心疾患の治療法として重要な位置を占め、本法でも年間20万人に対して施行されていると想定されています。また、末梢動脈インターベンション(EndoVascular Treatment;以下EVTとする)も、閉塞性動脈硬化症をはじめ、腎動脈狭窄症、鎖骨下動脈狭窄症など症例は増加してきています。しかしながら、その実態を正確に把握できるデータは現存せず、年間施行症例数、術成功率、合併症発生率などを正確には把握できない現状です。
本邦におけるPCI/EVTの全容を正確に把握し、データ収集、解析を行い、学問的な進展を図ることを目的に行います。また、PCI/EVTにおける今後の課題を明らかにし、その課題を解決するための方法を検討していくことで、さらにPCI/EVTが安全に行える治療として確立することができると考えられます。
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2.カテーテルアブレーション症例全例登録プロジェクト(J-ABレジストリ)
本邦において、頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーション治療は増加の一途をたどり、すでに年間5万例以上の手術がなされています。治療方法の発展に伴ってほぼすべての頻脈性不整脈が治療対象となり、いまや全国200を超える施設において日々の診療として行われています。ここまで発展してきたアブレーション治療ですが、実際の治療方法や結果に関する情報は一部の施設からの報告に限られており、日本全体でのリアルワールドの現状が把握されているとは言い難いです。今後さらに治療対象や症例数が拡大することを考慮しても、現時点から学会主導での全例レジストリを開始することの必要性が高まり、本プロジェクトを企画するに至りました。本プロジェクトによる研究成果は、医療従事者に対する有用なデータとなるのみならず、
患者・行政・司法に対しても有用な情報となるものです。また、将来的にはアジア太平洋不整脈学会(APHRS)や欧州不整脈学会(EHRA)等とのデータベースに基づいたネットワーキングが可能となるとともに、JROAD-DPCなどの他のデータベースと合わせて研究を進めることで、カテーテルアブレーション治療のCost Effectivenessの算出等も可能になると考えられます。また、データの蓄積が進むことで合併症発生の予測等のPrecision Medicineに用いることができるデータになると考えられます。
日本におけるカテーテルアブレーションの現状(施設数、術者数、疾患分類、合併症割合等)を把握することにより、カテーテルアブレーションの不整脈診療における有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにすることを目的とします。
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3.レセプトおよびDPCデータを用いた心疾患における医療の質に関する研究(JROAD)
レセプト、特定健診、DPCの情報を,熊本県急性心筋梗塞登録データベースの発症、診療情報のデータベースの情報と中核都市型医療圏における急性心筋梗塞診療、救急体制の実態調査を収集した地域医療機関、循環器発症、予後などの情報と組み合わせることにより、急性心筋梗塞、重症心不全の救急診療に関する大規模データベースを構築し、1)救急搬送時間の予後への影響、2)プロセス及びアウトカム指標による医療の質評価、3)医療費への影響を定量的に評価することを目的に、当院循環器内科に入院になった患者様のデータを使用させていただきます。
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4.心不全医療の適正化に資するための全国規模データベースによるエビデンスの創出(J-ROADHF)
人口の高齢化や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に伴う冠動脈疾患の増加、さらに急性冠症候群に対する急性期治療成績の向上と普及に伴い、心不全患者が増加しています。今後ますます心不全患者は増加すると予想されており、わが国の疫学研究では、2030年には心不全患者が130万人を超えると予測されています。慢性心不全患者の多くは増悪による再入院を繰り返すため、医療上のみならず医療経済上の大きな課題としてとらえられています。このような傾向は、わが国を含む先進国ばかりでなく世界各国で懸念されており、「心不全パンデミック」として、その対策は喫緊の課題となっています。このような問題点を抱えている心不全診療に対して対策を講じるためには、現在の診療実態を、患者一人一人に提供されている医療の内容のみならず医療施設・地域ごとの視点から明らかにする必要があります。しかし、現状では基礎資料とすべき十分な全国規模の心不全医療データベースは存在しません。
本研究の目標は、わが国の心不全の全国的な実態を反映するデータベースを構築し、その実態を明らかにするとともに医療の適切性を評価、患者さんの予後(入院や生存)を予測ための因子を同定することです。
そのために当院循環器内科に2013年1月1日から12月31日に入院になった患者様のデータを使用させていただきます。
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5.心不全の発症・重症化の高精度予測とそれに基づく適切な治療法の開発のための心不全レジストリ(J-ROADNEXT)
人口の高齢化や高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病や虚血性心疾患の増加、さらに急性冠症候群に対する急性期治療成績の向上と普及に伴い、心不全患者が増加している。 欧米では心不全患者を対象とした予後予測モデルに基づくリスクスコアが開発され臨床現場で広く活用されている。代表的なものは、Seattle Heart Failure Model(Circulation 2006)である1)。しかしながらこのモデルは重症例を対象として開発されたモデルであり、幅広い心不全患者に適用できない。一方、心不全の予後予測因子である糖尿病、BMI、腎機能を含む3C-HFスコア2)や、より大規模な心不全患者データベースに基づくMAGGICリスクスコア3)などが提唱されているが、これらの予後予測モデルは、いずれも欧米における大規模臨床試験やレジストリー研究のデータに基づくものである。欧米で提唱されている予後予測モデルを、患者背景や治療内容、さらに医療提供体制の異なるわが国の心不全医療、患者にそのまま当てはめることはできない。さらに、欧米の多くの研究では、心不全の予後予測に有用であることが確立しているBNPやNT-proBNPなどのバイオマーカーや、さらにはフレイルやサルコペニアなど高齢者心不全で広くみとめられる因子を検討した研究はほとんどなく、従来からの古典的因子を解析したものにとどまっている。わが国においては日常の心不全診療においてはバイオマーカーが広く利用されており、これらを予測因子として含めることで、さらに精度の高い予測が可能になると期待される。 本研究開発は、わが国における高精度な心不全発症・重症化予測法を開発するとともに、その有用性を検証し、それを活用した最適な効果的かつ効率的な治療戦略を見出し、心不全医療の質を向上させようとするものである。
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6.免疫チェックポイント阻害薬使用に伴う心筋障害に対する心筋障害に対する全国多施設共同レジストリ(MD-ICI)
近年、PD-1 および PD-L1 阻害薬といった免疫チェックポイント阻害薬(immune Checkpoint Inhibitor; ICI)による抗がん治療が盛んとなっている。ICI は患者自身の体内のT細胞を利用してがん細胞を制御しようとするものであり、従来の抗がん薬とは全く異なる作用機序を有している。ICI は腫瘍に対する免疫機能を増強する一方で、正常組織への自己免疫作用も刺激してしまうことにより、従来の殺細胞性抗がん薬や分子標的薬とは異なる独特なプロファイルの有害事象が認められている。この有害事象は免疫関連有害事象(immune-related adverse event; irAE)と呼ばれ、全身の様々な臓器に自己免疫疾患様の障害を引き起こす。これらの中で心筋障害は発生頻度が少ないとされているものの、発症時の致死率が最も高い合併症であり、注意を払うべき合併症である。しかしながら、治験段階においても心筋炎に関しての詳細な調査は行われておらず、真の発症頻度や発症時期、リスク因子等含め、判明していないのが現状である。 以上を背景に、本研究では、本邦における免疫チェックポイント阻害薬による心筋炎発症症例の臨床情報を集積し、発症状況の解明、心筋炎発症のリスク因子やバイオマーカー の検討を行うことを目的とする。本邦初の大規模な免疫チェックポイント阻害薬による 心筋障害の疫学調査である。 研究概要はこちらをクリックしてください
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7.カテーテルアブレーション全国症例登録研究(J-AB 2022)
本研究の目的は、全国のカテーテルアブレーション治療実施医療機関からカテーテルアブレーション治療に関する情報を収集し、日本におけるカテーテルアブレーション治療の現状を把握し、不整脈診療におけるカテーテルアブレーション治療の有効性・有益性・安全性およびリスクを明らかにすることです。本研究の成果は、将来の不整脈の診断・治療に役立つだけでなく、テーラーメード医療(個別的化医療)の実現化を推進することに繋がることが期待されます。
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